
はじめに:年金は「もらう人」だけの話ではない
「年金って、結局いくらもらえるの?」「そもそも、いつからもらうのが得なの?」
年金は多くの人にとって、老後の収入の柱です。それなのに、仕組みが複雑で、よく分からないまま後回しにしている人が多いのではないでしょうか。
この本は2022年4月の年金改正をテーマにしたものです。タイトルは「60歳から」ですが、学生や会社員、子育て世代、親世代の年金が気になる人にも役立つ内容が詰まっています。
ちょっと古い本ですが、年金について勉強になった本です
ポイント1:未納期間があっても、さかのぼって納付すれば年金額がアップ
「年金の保険料を払っていない期間がある」という人は、決して少なくありません。学生時代の未納、転職の合間の未払い、免除や猶予の期間などです。
この本では、未納期間があっても、さかのぼって納めることで年金額が増やせる場合があることを紹介しています。ただし、さかのぼって納められる期間には期限があるため、「気づいたときにすぐ確認する」ことが大切です。
ポイント2:年金は払い方ひとつで15,790円得する
表紙には「年金は払い方ひとつで15790円得する!」とあります。
国民年金の保険料には、まとめて前払いしたり、口座振替を使ったりすると割引になる仕組みがあります。同じ保険料でも、払い方の工夫で支払総額が変わるのです。
こうした「知っていれば簡単にできる節約」は、年金に限らず、お金の勉強の入り口として覚えておくと役に立ちます。
ポイント3:65歳以上でも、受給しながら働くと年金額が毎年増える
2022年4月の改正で、65歳以上で働きながら厚生年金に加入している人の年金額が、毎年1回見直されて増える仕組みが始まりました(在職定時改定)。
以前は、退職するか70歳になるまで、働いた分が年金額に反映されませんでした。今は働いた分が毎年少しずつ上乗せされるので、長く働くモチベーションにもなります。
ポイント4:パート・アルバイトの厚生年金加入の対象拡大
会社員の厚生年金は、パートやアルバイトでも一定の条件を満たすと加入できます。この対象が、改正で段階的に広がっています。
厚生年金に入ると、保険料は会社と折半になります。そのうえ、将来受け取る年金が上乗せされます。「扶養内で働くか、広げるか」を考える家庭にとって、避けて通れないテーマです。
ポイント5:受給開始年齢別シミュレーション(60歳・65歳・70歳・75歳)
この本の目玉のひとつが、年金をもらい始める年齢別のシミュレーションです。
年金の受給開始は、原則65歳です。ここから早めたり遅らせたりできます。
- 繰り上げ受給:60歳から64歳の間に前倒しでもらう。ただし、月ごとに年金額が減る。
- 繰り下げ受給:66歳以降に遅らせる。月ごとに年金額が増える。
2022年4月の改正で、繰り下げができる上限が70歳から75歳に広がりました。遅らせるほど毎月の年金額は増えます。最大では約84%増えるとされています。
ただし、増額は「長生きしたほうが得」という仕組みです。何歳まで生きるかは誰にも分かりません。この本のシミュレーションは、自分の健康状態や働き方、貯蓄と合わせて判断するための材料になります。
ポイント6:ねんきんネットとねんきん定期便の正しい見方
自分の年金記録を確認する方法として、「ねんきんネット」と「ねんきん定期便」があります。
届いた定期便を「とりあえず保管している」という人も多いでしょう。でも、そこには自分の加入記録や将来の年金見込額が書かれています。記録に漏れがないか、年齢によって見込額の意味が違うことなど、「正しい見方」を知っておくと、老後の見通しが立てやすくなります。
特別企画:50代からのお金ロードマップ
年金は、もらう直前に考えても間に合わないことがあります。そこで、この本には「50代からのお金ロードマップ」「老後マネーの賢い作り方」という企画も載っています。
年金だけで足りない部分を、貯蓄や投資、働き方でどう補うか。その準備は、50代、できればもっと早くから始めるのが理想です。
その後も続く年金改正:2026年の変化
この本が出た2022年以降も、年金制度は動き続けています。ここは、記事を読んでくださる方にぜひ知っておいてほしい点です。
たとえば、働く高齢者の年金に関わる「在職老齢年金」です。これは、給与と厚生年金の合計が一定額を超えると、年金の一部が支給停止になる制度です。2025年6月に成立した改正の時点では基準額は62万円でしたが、2026年4月からは65万円になります。それまでの51万円から大幅に引き上げられたため、一部の人は受け取れる年金額が増える可能性があります。
「年金が減るから働く時間を抑える」という人にとっては、大きな変化です。
つまり、年金の本は「出版時点での情報」であり、制度は毎年のように変わるということです。この本は、年金の考え方や仕組みを理解する土台として読み、具体的な金額や条件は、日本年金機構や厚生労働省の最新情報で確認する、という使い方がおすすめです。
この本はこんな人におすすめ
- 60歳前後で、年金のもらい方を考え始めた人
- 退職後も働くつもりで、年金との関係が気になる人
- 年金の繰り下げ・繰り上げで迷っている人
- パートやアルバイトで働いていて、厚生年金の加入を考えたい人
- 40〜50代で、老後資金の準備を始めたい人
- 親世代の年金について、一緒に考えたい人
この本の活用法
①まず、ねんきん定期便を手元に置く
本を読みながら自分の記録を見ると、「自分ごと」として理解できます。
②シミュレーションを自分に当てはめる
60歳・65歳・70歳・75歳のどれが自分に合うか、生活費や貯蓄、健康状態と合わせて考えます。
③気になる制度は、公式情報で最新版を確認する
ここまで述べたとおり、年金制度は変わります。本で興味を持った点は、公式サイトで必ず確認しましょう。
④家族と共有する
年金は、夫婦や親子で話しにくい話題です。本を見ながらなら、話し合いのきっかけになります。
おわりに:年金は「知っているかどうか」で差がつく
年金は、「国が決めたとおりにもらうもの」というイメージがあります。でも実際は、受給開始の時期や働き方、保険料の払い方など、自分で選べる部分がたくさんあります。
この本の表紙にある「生涯1500万円差がつく」という言葉は、少し刺激的です。でも、選択肢を知らないまま過ごすより、知ったうえで選ぶほうが納得のいく老後につながるはずです。
年金は誰にとっても他人事ではありません。まずは、ねんきん定期便を開くところから始めてみませんか。

